近年、日本では性行動の低年齢化とともに若年層にも性感染症が増加している。現在、40~50%の高校生が卒業までに性経験するといわれ未経験者が焦燥感に悩む場合も多く、短絡的に物事を捉えやすい思春期・青年期だからこそ、性感染症予防のための判断力決定力を養う教育が必要とされている。
性問題に関する教育は「生きるための心を学ぶ教育」であり、「自分や人を大切にする教育」「いのちの教育」であることが重要だと考える。私は保健師として、発達段階に応じて小学生では命・心・身体等の尊さ・美しさから自分や人を大切にする心を養い、自尊心が低下しやすい思春期には身体面の二次性徴以外にも精神面の発達や葛藤とその対処方法を、中学・高校生では「性と生」の尊さ・美しさに加え性感染症や人工妊娠中絶等の性リスクを、そして、経済・生活・精神・性的に自立していない時期の性行為はリスクを伴う行為であることを、発達課題を用いて教育することが必要だと考え、これまで取り組んできた。
これらの系統的継続的な教育は、いのちの軽視・DV(Domestic Violence)・虐待等、現代の様々な問題予防にもつながると考えている。
私たち保健師は地域における様々な事例を把握しているからこそ、教師や地域の大人に対し性教育の必要性を認識させるための情報提供ができる。「自分や人を大切に思う心を養う」地域の取り組みが系統的継続的性教育を支え、子どもたちや若年層の認識・意識・行動を変え、日本の性感染症低下へとつながっていくことを期待している